音楽家のための英語

日本では英語が必修科目であり、誰もが勉強していますが、英語で音楽を語る場合には、英会話教室や、教材では絶対に出てこない表現が使われます。留学したときに、まず戸惑うのはこれらの表現。

ここでは、音楽科の生徒に必要な英語表現を少しずつ紹介していきます。


まずは3か月我慢?


 日本ではある程度の英語は勉強してアメリカに留学した。

しかし、インディアナ大学に到着してみると、学生達のくだけた早口の英語は、何を言っているのか全く分からない。

誰も英語の教科書で習ったようには話してはいないのだ。

挨拶ひとつをとっても、学生の間では

"Hello. How are you?" "Fine, thank you."

なんていう挨拶が交わされていることはほとんどない。

いきなり

”Hey, what's up?"

とくる。それに対してどう答えていいかさえわからない。戸惑って友達に聞いたところ、「どう?」といった意味合いの挨拶で、それに対しては "Not much." とか "I’m doing great." と返せばいいのだということがわかった。

音楽科の生徒同士でよく交わされる会話、「今何の曲をやってるの?」も、日本人だったらまず

"What are you studying?"

と考えると思うが、これも

"What are you working on?"

と聞かれることが多い。

 

 そんな調子で始まったアメリカ生活だったが、インディアナ大学は生徒数3万5千人の、世界中から留学生が集まる総合大学だったので、大学院生用の寮(男女共同、co-ed)に住み、アメリカ人以外にも様々な国籍の学生と会話をしながら一日3食カフェテリアで食事をすることを余儀なくされ、3か月ほどたった頃、ふっと英語が耳に入って来るようになった。

 3か月というのは、人間の脳が新しいものに慣れて結果が出はじめる、ひとつの目安の期間のような気がする。

 

 

アカデミックライフのためのことば(アメリカ英語)

学期 semester (2学期制の場合)

一学年度 academic year

学士号 Bachelor's degree  

修士号 Master's degree

博士号 Doctor's degree、Ph.D.

(日本ではあまり使うことのない言葉だが、大学を卒業してすぐ就職する日本と違って、アメリカでは大学院に進む学生が多いので、わりとひんぱんに耳にする。)

入学 admission

卒業 graduation

専攻 major

音楽科 music school

レポート  paper

成績 grade

学部長  dean  ( 何かとお世話になることが多い)

 

学年には、それぞれ呼び名がある。

1年  freshman

2年  sophomore

3年  junior

4年  senior

 

 

 

 

 

頑張ってね! Good luck!

因みに演劇の人たちは Break a leg!という。

 

¼ a quarter (何かとよく使う言葉。2時15分はquarter past two、25セントコインも通称quarter、ハムや惣菜の注文も何gではなく、a half pound, a quarter poundを使うことがほとんど。)

 

(時計が)進んでいる fast

                遅れている slow

 オタク  geek



Fraternity, Sorority  日本人にはいまいちピンと

こない、秘密めいた謎の組織。起源はフリーメイソンにあるという説も。Fraternityは男子学生、Sororityは女子学生が、それぞれ自分の属するクラブのメンバーと共に共同生活を送り、全国の他のメンバーとも交流をする。クラブ名も、

ΩΨΦ、ΠΒΚなど、全てギリシャ文字3文字なので、ますます訳がわからない。このギリシャ文字の書かれた寮は、キャンパスのあちらこちらに点在する。

 

 

 

 


音楽特有の表現 

音符 note

休符 rest

小節 measure, bar 

強弱 dynamic 

楽譜 music

(何となく納得が行かないのだが、これだけで

楽譜の意味にもなる)

拍 beat

四分音符 quarter note

二分音符 half note

調 key

音程 interval(二つの音の間の音程)

   intonation(いわゆる音程がいい、悪いと    いうときの音程)

臨時記号 accidental

3度 third  5度 fifth

音楽理論 music theory

楽章 movement

フレーズ phrase

重音 double stops

終止線 double bar

装飾音 grace notes

表情・表現 expression

拍子の読み方

分数は英語では上から先に読む

¾はthree four

⅝はfive eight

でも2分の2はcut timeと読む

弦楽器  string instrument

木管楽器 woodwind

金管楽器 brass

弦  string

指板 fingerboard

松脂  rosin

譜面台  music stand

毛替え  bow rehair

弓の先  tip

弓の元  frog

右腕 bow arm

緊張している nervous

全弓  whole bow

弓の返し bow change

移弦 string crossing

音を長くのばす sustain the note

調弦をしたいときには Can I have an A?

音程が合っている in tune

音程が高い  sharp

音程が低い  flat

 スラーでなく、弓を返すこと separate

伴奏者 accompanist  (伴奏はaccompaniment)

運弓法 bow stroke

演奏のアルバイト gig

即興 improvisation

初見 sight reading

(先生の)教室 studio

~先生についている study with Mr./Ms.~

 (演奏が)素晴らしい、上手い、ひどい

sounds great, good, bad


オーケストラで

stand  プルト 

stand partner プルトで一緒に座っている人 

turn the page  ページをめくる 

seating   席次

rehearsal numbers(楽譜の)練習番号 

on (off) the string 弓を飛ばさないで(飛ばして)弾く

principal (top) 首席 

top side 次席 

 

cue   指揮者の合図

downbeat 強拍、表拍

upbeat  弱拍、裏拍

dress rehearsal ゲネプロ 

performance 本番 

complimentary ticket(comp ticket) 招待券 

measured トレモロではなく、リズム通りの数の音を弾くこと 

3 measures /bars before (after) E Eの3小節前(後) 

    〃            with pickup    Eの3小節前(後)にアウフタクトの音もつけて

靴磨き?

 オーケストラでコンサートミストレスをしていた時のこと。

日本のオーケストラでは、リハーサル中にうしろから団員がコンマスに質問をすることはあまりないように思うのだが、アメリカでは何かと皆が質問をしてくる。

 あるとき、タッカタッカと符点のリズムが続くパッセージで、

"Is this shoe polish or hooked?"

と、尋ねられた。

靴磨き??

どうやら符点のリズムを、下の写真のようにスラーでつなぐか、全てアップ・ダウンでにやるかと聞きたかったらしい。

 アップ・ダウンで弓を忙しく左右に動かす様は、確かに靴みがきのようかも知れない…。

オケの譜面の書き込み

on 弓を飛ばして弾く

off 飛ばさないで弾く

M 弓のまん中で

U.H. 弓の上半分で弾く

L.H. 弓の下半分で弾く

tacet そこの部分は弾かない

1✖ tacet 繰り返し記号の1回目は弾かない

(読み方は first time tacet)

 

(ページの終わりに書かれた場合)

V.S. ページを急いでめくる

time 急いでめくる必要はない


曲名の短縮化

 日本では、音楽通の間ではオーケストラの曲名は短縮されて、会話に登場することが多い。

ベートーベン 交響曲第7番→ベト7

チャイコフスキー 交響曲第5番→チャイ5

ドヴォルザーク 交響曲第8番→ドボ8 

その他、プロコ、ショスタコなど。

これはオーケストラ曲に限らず、日本語全体に見られる傾向で、私も日本に帰国したばかりの頃、

いきなり「とりせつ持ってる?」と聞かれて何のことかさっぱりわからなかったが、取扱い説明書のことだと、あとから知った。

 

 英語圏では、曲目を省略することはほとんどない。beethoven 7th、shostakovich 1stと、全て読む。唯一の例外はチャイコフスキー。Thaik 5(チャイク ファイブ)と略される。

 

 日本語での、オケ(これも短縮形ですね)の曲のニックネームは海外では通じないので、気をつけましょう。

 

Bless you!

 アメリカに住み始めてしばらくして、くしゃみをするたびに、そばにいる人が何かをつぶやくことに気づいた。どうやら、 "Bless you." と言っているらしい。またもや、それに対してどう反応していいのか分からない。

 これは、中世ヨーロッパでの 「くしゃみをすると魂が抜けて悪魔が入り込む」 という言い伝えから、くしゃみをした人に 「神のご加護を(悪魔が入り込みませんように)」 と声をかけるところから来ているのだそうだ。それに対しては、”Thank you." と言うのが一般的だ。

こちらからすると、くしゃみをするたびにいちいちコメントされるのは少々うるさい気はするのだが。