子供のころから、昔のヨーロッパの名画が好きだった父の横でいつも一緒に見ていた影響もあり、学生のころから暇さえあれば映画館に足を運んでいました。中でもクラシック音楽がテーマになっている映画は大体チェックしています。
ヴァイオリンに限らずピアノやチェロでも、映画の中で俳優、女優がにわか仕立てで楽器を弾いている姿は、プロから見るとどことなく不自然で、実際に弾いていないことがすぐに分かります。そんな中で、本木雅弘さんが「おくりびと」の中でチェロを弾く姿はとても自然で動きが美しく、もし昔から習っていたのでなかったら、猛特訓の成果なのだろうなと思いました。
ここではヴァイオリンが登場する映画をいくつかご紹介します。
間違いで入ってしまった、老人ばかりのとんでもないアマチュアオーケストラを立て直そうと、杏の演じる主人公が奮闘する。荒木源原作の小説の映画化。
アマオケ団員の演奏にかける情熱や、純粋に楽しみで演奏する姿は、オケを仕事として生計をたて、次々と曲をこなしていかなくてはいけないプロオケ団員のクールさとは全く正反対で、たまにはこういう初心に帰ることも大事だなと気づかされる。
旧ソ連での共産主義時代に、ユダヤ人排斥政策のためにボリショイ交響楽団を解雇されてしまった指揮者を始めとする音楽家たち。たまたまパリの劇場で公演がキャンセルされ、楽団の代わりに、今は落ちぶれてしまった仲間を急きょ集めてボリショイ交響楽団になりすまし、パリでの公演に向けて奮闘し、奇跡が起こる。
チャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲が一つのテーマになっている。
ドタバタコメディー。
ヴァイオリンが話の中心となっているわけではないが、妻に「私よりヴァイオリンが大事なの!?」と命より大事なヴァイオリンを壊されてしまい、死を決意する天才ヴァイオリニストの話。死ぬ前に、かなわなかったかつての恋に想いをはせる。主人公はどことなくフリッツ・クライスラーに似ている気も。
フランス・ドイツ・ベルギーの合作だが、女流監督、出演女優ともにイラン人女性のファンタジー映画。
イギリスの二大女優、ジュディ・デンチとマギー・スミス出演のイギリス映画。
イギリスの田舎で満ち足りた静かな生活を送る初老の姉妹のもとに、突然浜辺に打ち上げられた異国の青年が現れる。彼の看病をしていくちに、彼がヴァイオリニストだと知る。次第に二人は彼に惹かれていく。
ヴァイオリンで奏でられる美しいテーマ曲はジョシュア・ベルによって演奏され、「ヴァイオリンと管弦楽のファンタジー」という曲名で楽譜が出版されており、フィギュアスケートの音楽にも用いられている。
アメリカでの実話を元に作られた作品。ニューヨークのハーレムの荒れた学校にやってきた、メリル・ストリープの演じる音楽教師は子供たちにヴァイオリンを教え始め、悪戦苦闘しながらも、子供たちは少しずつ音楽の楽しさを見出していく。しかしアンサンブルクラスの閉鎖を通告され、クラスの存続をかけてカーネギーホールでのチャリティーコンサートを企画する。実際にアイザック・スターン、パールマン、ジョシュア・ベルなどのヴァイオリニストが映画に登場する。
因みにNYに住む私の友人はメリル・ストリープが演奏するシーンを代理で後ろから撮影するための仕事を依頼されたが、体型が若干違っていたので却下となったそうだ。
2018年公開。内容は若干ミュージック・オブ・ハートと似ており、こちらもまた実在の教育プログラムをもとに描かれていて、舞台はパリ。かつてクァルテット奏者として成功したヴァイオリニストが、人種も様々な荒れた学校で子供たちにヴァイオリンを教え始める。そこで一人の才能ある少年と出会う。始めは手を焼いた子供たちも次第に演奏することに喜びを感じ始め、一年後の演奏会に向けて頑張る。
楽器を始めたばかりの子供たちがいきなりリムスキー・コルサコフのシェヘラザードを演奏するというのは若干話に無理があるような気も。
魂を悪魔に売ったとまで噂され、自堕落な生活を送ったとされる天才ヴァイオリニストと、その才能を見出し、世に送り出そうと力を尽くした二人の男、そして彼が愛し続けた一人の女性。天才として称賛を浴び、当時の大スターとなったものの、私生活では決して幸せとは言えなかったパガニーニのスキャンダラスな生活に焦点が当てられた作品。
ヴァイオリニストでモデルもしたことがあるデイビッド・ギャレットがパガニーニを演じ、実際に超絶技巧のパガニーニの曲を見事な腕前で演奏している。
カナダのオークションに、真っ赤なニスの伝説の名器が出展される。その楽器が何世紀にもわたって5か国を旅して、人の手から人の手へとわたってきた数奇な運命をさかのぼりながら、ニスの秘密に迫る。
オールドの楽器は私たち人間よりもはるかに長く存在していて、さまざまなヴァイオリニストの人生をともに歩んで見つめてきたに違いない。そんな楽器の神秘に思いをはせずにはいられない。
アカデミー賞音楽賞を受賞したジョン・コリリアーノが音楽を担当し、ジョシュア・ベルが演奏している。
原題はEn Coeur en Hiver (冬の心)。1992年公開のフランス映画。ヴァイオリニストを演じるエマニュエル・ベアールは美しいけれど、弾き方は若干不自然。ヴァイオリン工房の経営者、ヴァイオリン職人、ヴァイオリニストの恋の物語なんていう渋いラブストーリーはフランス人以外は絶対に描かないであろう。全編にラヴェルのヴァイオリンソナタが静かに流れ、しっとりとした魅力を添えている。
終わりもまた、フランス映画にありがちな、え?ここで終わり?と釈然としない思いが残る、静かな余韻の残る映画。
ついでに… ちゃんとプロのカメラマンが撮影した風ではあるけれど、このような見当違いの写真は笑っちゃうのでやめて欲しいです。